Authors : |
森下靖雄, 有川和宏, 山下正文, 大園博文, 下川新二, 西元寺秀明, 丸古臣苗, 平明, 米沢傑*, 佐藤栄一* |
Abstract : |
肝機能障害を有する重症弁膜症には, 開心術前に肝のopen biopsyを施行し, 血液生化学検査成績及び病理組織所見の双方より総合的に肝障害の程度を評価している. 今回は肝のopen biopsy施行症例を中心に肝機能障害を有する重症後天性弁膜症への対応と手術成績を検討した. 1978年8月より1985年8月までに手術した379例の後天性弁膜症中, 肝のopen biopsy施行症例は22例で, 年齢は平均45.5±10.7歳, 男女比は8対14であった. 全例肝は腫大し(4.5±2.7cm), 血液生化学検査値上, 総ビリルビン, LAP, LDH, γ-GTP, TTT, ICG15分値, hepaplastinテストがいずれも異常値を示した. うっ血肝の組織像を線維化の強さの程度でIII度に分類し, 正常1例, I度(軽度のうっ血肝)15例, II度(うっ血性肝線維症)4例, III度(うっ血性肝硬変症)2例であった. 3例の病院死, 1例の遠隔死はいずれも直接肝機能障害によるものではなかった. 病理組織所見上, 病院死の3例はI度, 遠隔死はII度であったし, それら死亡例の血液生化学検査値は悪いものではなかった. また, 血液生化学検査値上, 高度の肝機能障害を有する症例の肝の病理組織所見は必ずしも悪いものではなかった. 以上より, 1)手術成績は血液生化学検査値及び肝病理組織所見の重症度と相関せず, 肝の組織像は血液生化学検査成績と一致しなかった. 2)肝機能の予備能力は血液生化学検査及び病理組織所見の双方の成績より総合的に評価されるべきで, その結果, 肝細胞に予備能力があると思えば, 開心術に対して積極的な姿勢が望まれる, との結論を得た. |