Abstract : |
Polyvinyl alcohol水溶液を反復凍結して得られるhydrogel(日本石油, 以下PVA-H)は組織反応が少なく, 85~90%の含水率でありながらゴムに類似した物理的特性を持つ物質である. 内径10~12mm, 壁厚2.5mm, 長さ30~40mmのPVA-H管を雑種成犬の頸部気管に移植し, PVA-H管の人工気管としての有用性を検討した. 用いたPVA-H管は, 1)含水率85%の硬質管(硬質群, 4頭), 2)含水率90%の軟質管(軟質群, 4頭), 3)含水率85%の硬質管の周囲にteflon meshを被覆したもの(硬質テフロン群, 12頭)の3群であった. 硬質群の最長生存期間は176日で, 屠殺した1頭を除く他の3頭の死因はいずれも吻合部離開であった. PVA-H管内腔は良く保持されていた. 軟質群の最長生存期間は41日で, 死因は移植管周囲の感染(3頭), 移植管の喀出(1頭)であった. PVA-H管は周囲より圧迫され, 狭窄状であった. 硬質テフロン群12頭のうち, 3頭は移植後106, 113, 190日の現在生存中である. 9頭は死亡し, 死因は移植管周囲の感染(4頭), 吻合部離開(2頭), 肺炎(2頭), 移植管の離解喀出(1頭)であった. 硬質PVA-H管は十分な強度と柔軟性を持ち, 組織反応も少なく人工気管の特性を備えている. 感染や吻合部固定法など解決すべき問題もあるが, 新しい人工気管として有用と考える. |