Abstract : |
Fallot四徴症の右室流出路は肺動脈弁輪部を境として前後に屈曲している. 術前アンギオから右室流出路傾斜角を測定すると, パッチ拡大術を必要とした通常型Fallot四徴症11例は31°~54°(平均41°)で正常例の平均24°の2倍近い傾斜角があった. 著者はこの形態を考慮し, 更に半月状弁の閉鎖機序に果たすValsalva洞の役割を重視して, 「へ」の字状に軽度屈曲し, 且つ洞構造を有する一弁付きパッチ移植片を開発した. 本研究の目的は従来の平坦な直線状の無洞の一弁付き, 又は弁無しのパッチ移植片と比較した本パッチ片の利点を実験的に評価することにある. 犬を用いた予備実験で肺動脈の弁尖を1個ずつ除去していくと, 除去個数に比例して逆流率の増加と心機能曲線の右方移動(心機能低下)を認めた. 右室流出路部分遮断によるパッチ移植実験で弁の動きをX線映写で観察すると, 有洞パッチの弁はほぼ正常の弁運動を行ったのに対し, 無洞パッチ例のそれは不自然であった. また, 造影所見からも有洞パッチの方がより完全な弁閉鎖能をもつことが証明された. 更に, 犬心肺標本回路を用いての流出路パッチの移植実験でも, 有洞一弁パッチ移植例ではほとんど逆流がないのに対して, 無洞一弁パッチ移植例では逆流防止効果は少なく, 代用血管パッチ例では右室流出路-肺動脈間に狭窄を生じた. それは移植後に測定した圧波形や脈動脈の血流パターンでも証明された. 移植後6ヵ月までの慢性実験犬8頭で洞内に血栓形成を起こしたものはなかった. 従来の平坦な直線上のパッチでは再建された流出路は楕円状を呈し狭窄が残るのに対し, 開発した移植片は円形を保持する. 軽度屈曲をもつ有洞一弁付きパッチは正常自然な弁運動様式と有効な狭窄解除の2点において現在臨床に使用されている流出路パッチより優れた機能を持つことが判明した. |