Abstract : |
犬摘出心標本を用いて, Young GIK法(心筋温10℃)と心室細動法(心筋温20℃)の心筋保護効果を比較した. 常温empty beating群240分(n=4), Young GIK群180分(n=8), 心室細動群180分(n=8)の3群を作製し, 心筋pH, 左室仕事量(LVW), 冠血流量(CoF), 心筋酸素消費量(MVO2), 心筋乳酸摂取量(Elac), 過剰乳酸(ΔXL)について検討した. Young GIK群8例のうち6例が蘇生後complete A-V blockを呈し, 120bpmの右室ペーシング下に各測定を行った. LVWは左房圧3, 4, 5mmHgのいずれにおいても, empty beating群が最も優れた回復率を示し(p<0.01), 他の2群間では左房圧4, 5mmHgにおいて, それぞれYoung GIK群30±14%, 27±11%心室細動群45±11%, 40±13%と後者の方が優れていた(p<0.05). 常温working beat時の心筋pHの3群の平均は7.38±0.13であったが, 心筋保護中のYoung GIK群は経時的に低下し, 180分後には6.18±0.14に至ったのに対し, 心室細動群は常温empty beating群と同様に有意に低下することはなかった. 心室細動群の冠血流量は, 心筋温20℃下においても常温empty beating時より多く, 心筋酸素消費量は20℃心室細動時では常温empty beating時の28~43%にまで減少していた. すなわち心筋酸素消費量の減少の割に, 冠血流量が多く維持されていた. 心筋乳酸摂取量, 過剰乳酸については, 蘇生後Young GIK群と心室細動群の間に有意差を認めなかった. 以上, Young GIK法(心筋温10℃)と心室細動法(心筋温20℃)の180分後の心保存状態を検討した結果, 左室仕事量の回復率において心室細動法の方が優れていた. |