Abstract : |
中枢性右脚ブロック心に対し, 右房及び右室表面最早期興奮部位にそれぞれ刺激電極を縫着して右房-右室順次ペーシングを行い, 電気生理学的及び血行動態的検討を行った. 動物実験は雑種成犬を用い, 右室前壁より針を刺入して中枢性右脚ブロックを作製し以下の結論を得た. (1)A(心房刺激)-Q間隔より平均21msec短いA-V(心室刺激)間隔で順次ペーシングを行うことにより, 体表心電図及び心表面興奮伝播地図はほぼ正常化した. (2)Q-RV upstroke時間及びQ-RV max dp/dt時間はいずれも有意に短縮した. (3)右室拡張末期圧は有意に低下した. 右室max dp/dtは有意に上昇し, その差は肺動脈絞扼による右室圧の上昇に伴って顕著となった. (4)心室中隔穿孔例では左室圧及び大動脈血流量も明らかに上昇し, 劇的な心機能改善効果を示した. 更に臨床研究では, Fallot四徴症根治術後の右脚ブロック症例を用いて以下の結果を得た. (1)順次ペーシングによって実験的研究におけると同様な右心機能の改善を認め, 更に右室圧が高値にとどまった症例では左室収縮期圧の上昇も認められた. (2)体表心電図は正常化する傾向を認めたけれども, 右心流出路切開による末梢性ブロックの関与のため, この正常化は不完全なものにとどまった. 以上のことから, 中枢性右脚ブロックによる興奮伝播様式の異常は右房-右室順次ペーシングによりほぼ正常化することが可能であり, これによって右室機能は改善し, 右室圧負荷心及び心室間交通心においては血行動態も改善することが認められた. |