Abstract : |
僧帽弁置換術症例35例を対象として心エコー検査及び心臓カテーテル検査を行い, 開心術後における心室中隔異常運動の発生機序及び心機能への影響を検討した. 断層心エコー法による腱索レベルでの左室短軸断層像により, 術後の心室中隔運動の様式から症例を, I群:心室中隔が拡張期に右脳側へ向かって運動する症例(n=8), II群:心室中隔が拡張期にほとんど運動しない症例(n=4), III群:心室中隔が拡張期の一時期, 又は全期に左室側へ向かって運動する症例(n=23)に分類した. 左室ポンプ機能を示す指標は, 術後はI群がIII群より有意に高値(I群~III群;FS:36.9%~28.6%, mVcf:1.45circ./sec~1.17circ./sec, FAC:61%~50%, LVEF:64%~55%;p<0.01~0.05)であった. 術後の左室容量を比較すると, 拡張末期容量はI群とIII群がほぼ同値を示したのに対し, 収縮末期容量はI群でIII群より低値を示した. 左室容量の術前後の変化をみると, I群では術後主として収縮末期容量が減少し, III群では主として拡張末期容量が減少した. 同時記録した両心室圧を比較すると, 異常運動群では術後拡張期において明室圧が左室圧を越えており, 術後のLVEDPはI群で平均16.0mmHgとなってIII群の平均8.2mmHgより有意に(p<0.005)高値であった. 以上の検討結果から, 1)心室中隔異常運動群では, 術前に比し術後の左室拡張末期容量が減少し, 結果, 左室ポンプ機能が低値を示した. 2)心室中隔異常運動の発生機序としては, 左室への何らかの流入障害が存在するために, 拡張期に右室圧が左室圧を越えることによると考えられた. 3)心室中隔正常運動群では術後LVEDPが異常運動群より高値を示したが, これは左室流入の改善効果と考えられた. |