Abstract : |
心内膜床欠損症(ECD)の外科治療において欠損孔の閉鎖, 房室弁逆流の阻止と刺激伝導系の温存が重要であるが, 特に幼小児期手術においては, 房室弁逆流の阻止は急性期, 遠隔期においても問題となっている. 教室では1981年から1985年末までに心内修復術を施行した幼小児ECD 8例の僧帽弁逆流(MR)に対し, 裂隙縫合, 弁輪形成に加え全弁輪縫縮術を施行した. 7例に吸収糸を用い中隔部分は心房中隔形成用心膜パッチ縫着基部に, 刺激伝導系付近は伝導系をさけ僧帽弁膜基部に, 他は弁輪に糸を通し, Rowlattの正常値を基準に縫縮した. 成人僧帽弁輪径の径25mmでMRを阻止し得た1例ではPolypropylen糸を使用した. 全例MRは術前のII, III度からI度に軽減し, CTRも減少した. 吸収糸を使用した7例では, 遠隔期において断層心エコー及びDopplerでは縫縮した弁輪径は拡大発育しており, MRの増強も認めず, 吸収糸による僧帽弁全弁輪縫縮術はMRの修復をさらに容易にし, 急性期のMRによる心不全を軽減, 遠隔期には弁輪の成長が期待され, 特に乳幼児期手術例に対し有用な方法と考えられた. |