Authors : |
岡本交二, 橋平誠, 荻野均, 薗潤, 岡田行功, 宮本覚, 西内素, 秦紘, 立道清, 庄村東洋 |
Abstract : |
Cardiac cachexia(cachexia)は弁膜症の終末像と考えられ, 手術成績は極めて不良であり, その定義や病態生理に一定の見解はない. cachexiaを, 1. NYHA IV度, 2. 僧帽弁を主病変とする三尖弁閉鎖不全の合併, 3. うっ血肝(右季肋下部で4横指以上), 4. “るいそう”(標準体重80%以下)の4条件を満たすものとした. この基準を満たす手術症例14例を対象として栄養評価とアミノ酸分析とを対比させて病態生理の解明を試み, 以下の結果を得た. 1. “るいそう”は高蛋白の消耗(標準上腕筋引84.1%)と皮下脂肪の菲薄化(標準三頭筋部皮下脂肪厚27.5%)によるものである. 2. 栄養不良を伴うcachexiaに免疫学の低下(リンパ球数770/mm3, PPD皮内反応1.8mm)がみられる. 3. cachexiaの肝機能は高度に障害(ChE 0.45△PH, PT活性60.9%, T-Bil2.1mg/dl, ICGR15 32.3%)されている. 4. cachexiaのアミノ酸代謝異常は, 側鎖型アミノ酸(BCAA)とアラニンの減少, 及び芳香族アミノ酸(AAA)の増加が主体である. 5. BCAA/AAAは健康成人の2.96に比べ, cachexiaは2.03, 肝硬変は1.20と有意に低下している(p<0.01). BCAA/AAAは筋蛋白(%AMC, %CHI), 肝機能(ChE, PT活性)と正の相関(p<0.01)が, T-Bilとは負の相関(p<0.01)がみられ, リンパ球数とは正の相関がみられる(p<0.01). cachexiaの代謝・栄養障害はLOSと長期の右心不全によるうっ血性肝障害とに起因するカタボリズム亢進の結果であり, BCAA/AAAはcachexiaにおける栄養障害, 免疫能低下, 肝障害の程度を示す良好な指標と考えられた. |