アブストラクト(35巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 外科的切開法が心房伝導に及ぼす影響に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 渡辺直, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 6
Page : 839-845
Year/Month : 1987 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心房伝導に与える外科切開の影響を調べるため, 雑種成犬15頭を用いて実験的検討を行った. 摘出拍動心標本を作成, これを用いて, 心房表面45点, 右房心内膜面26点の近接電位を測定し, 心房興奮伝導等時間線図を作成することにより, 伝導パターンを比較検討した. この結果, (1)右房表面では洞結節を起点にして放射状に興奮が広がってゆくが, 分界溝に沿った伝導が最も速かった. また左房表面ではBachmann束を伝っていち早く上面に伝導し, しだれ柳状に下部に伝わっていった. (2)心房間溝に沿う左房切開, 並びに房室間溝に沿う右房最下端の切開を施行しても上記の伝導パターンに有意の変化を認めなかった. 一方, 中央部に斜切開を加えると右房表面伝導パターンは大きく変化し, 切開線を挟んで20~30msecの伝導遅延を生じた. (3)右房内膜面では, 後方分界稜に沿った筋束と中隔の前面の平時の双方を伝って興奮がいち早く伝わり, 洞結節より房室結節近傍まで36.0±5.4msecを要した. (4)卵円窩切開により伝導パターンは変化しなかったが切開線が前方筋束に及ぶと切開部で20msec程度の遅延が生じ, 更に切開が後方分界稜に加わるとパターンは著しく変わり, 房室結節への伝導到達も59.3±4.2msecと有意(p<0.05)に遅れた. 以上の結果より, 右側左房切開が心房伝導に有意の影響を与えないのに対し右房, 並びに中隔切開を施行すると伝導様式に変化を生じ, 更には結節間伝導の有意な遅延を起こす場合があることがわかった. これら伝導障害を起こさないためには, 右房切開に際し房室間溝に沿って最下端で入り, 分界溝(稜)や中隔の前面の筋束に不要な侵襲を加えないことが重要と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心房伝導, 外科切開, 上室性不整脈, マッピング
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