Abstract : |
解凍赤血球濃厚液と加熱人血漿蛋白液にて体外循環回路充填を行うことの有用性を検討した. また, 溶血防止剤であるpoloxamer 188の併用効果と術後に解凍血小板濃厚液を加えることの有用性も合わせて検討した. 基礎実験として, 閉鎖回路の体外循環モデルを回転させ各種血液性状の経時的変化を測定した. その結果, 解凍赤血球濃厚液と加熱人血漿蛋白液で充填した群においてpoloxamer 188を併用することで血清遊離Hbの上昇を抑えることが可能であった. また, 新鮮血小板濃厚液にはやや劣るが, 解凍血小板濃厚液を加えることでthromboelastogramが測定可能であった. 以上により, 本法を臨床例8例に応用した. その結果, 対象群の術直後の血清遊離Hb(65.6±18.5mg/dl)とCPC法による赤血球膜抵抗試験の溶血開始点(102.1±4.3mOsm)では対照の新鮮血群との間に有意差があった. また, 対象群では加熱人血漿蛋白液を用いていることより術後フィブリノーゲンの低下を認め, またPTT, PT, ADP付加血小板凝集率, 及びthromboelastogramのma幅の異常値を呈したが, 出血時間(Ivy法)及び術後出血量には両群間に差は見られなかった. 術後のtransaminaseを検討した結果, 対照群8例中3例にその値の上昇を見たが, 対象群では全例とも正常範囲であった. 以上により, 本法を用いた体外循環は輸血に伴う合併症を極力防止可能で, 解凍赤血球濃厚液及び解凍血小板濃厚液の長期凍結保存可能なことより緊急時などに際しても円滑な血液供給がなされ, 極めて有用な方法と思われた. |