Abstract : |
当教室においては, 心筋組織PCO2を経時的に測定することにより, 虚血心筋, 及び再灌流後の代謝動態と心筋障害の程度について検討してきたが, 今回われわれは, 雑種成犬を用いて心保存中及び心移植, 再灌流後の動態と心機能の回復について検討を加えた. Donor犬よりの摘出心の心室中隔にPCO2, 温度センサーを刺入後, 2~4℃GK液中に6時間単純保存した. 保存心は体外循環下心摘出されたRecipient犬に移植され, 50分後に再灌流を開始し, 45分後には心機能を測定した. なお, 移植中の心筋保護法により, GK液非使用群をA群, GK液の間欠的投与群をB群とした. 心保存時, 平均心筋温は4℃で, 組織PCO2は6.4mmHg/hrの上昇を認めた. 移植時は, B群において心筋温, 及びPCO2の上昇は有意に(p<0.001)抑制され(A群:心筋温4.8℃→23.5℃, PCO2 54mmHg→186mmHg, B群:4.8℃→13.2℃, 55mmHg→69mmHg), 再灌流後は心拍動再開により急速に回復した. また, 心摘出前, 及び移植後のSWIの回復率では, A群39%, B群55%と有意差が認められた(p<0.05). そこで, 移植時の条件がB群とほぼ同じ心筋温12℃, 1時間in situ虚血群とB群とを比較すると, SWI回復率では差はなく, SWIによる心機能曲線では, 容量負荷によりB群に低い傾向が認められた. 結論:1)心筋温4℃においても, 嫌気性代謝の進行が示唆されたが, 保存6時間後の心機能回復は, 移植時間を考慮に入れると比較的良好に保持された. 2)移植時の心筋保護は特に重要であり, 移植後の心機能回復に強く影響すると考えられた. 3)心筋組織PCO2の経時的測定は, 心保存, 移植中, 及び再灌流後の代謝動態の指標として有用であった. |