| Abstract ： |
肺切除によって生じる胸腔と残存肺との容量アンバランスが, 残存肺の換気動態にどのような障害をもたらすかを雑種成犬に両側肺切除術を行って検討した. 肺切除前に, 残存予定肺の1つである右下葉気管支にチューブを挿入し, 他の肺葉と分離換気させた. そして, 肺切除前後に陰圧box内に実験犬を置き, 食道内圧及び右下葉単独の圧量曲線を求めた. 右下葉分離換気, 続いて左上葉切除, 更に右上中葉切除を行い, それぞれの前後に, 右下葉の圧量曲線などを計測した. FRCレベルでの食道内圧は, 左上葉切除により陰圧が強くなり, 右上中葉切除の追加により更に陰圧化が強くなった. これは肺切除によりtranspulmonary pressureが増大してくることを示していると考えられた. 右下葉の圧量曲線では, 肺切除量の増加とともに, 術前の曲線がより陰圧, 低肺気量方向に移動した. これは, 肺切除後胸腔の陰圧化に伴い, 残存肺である右下葉のFRCが, 高肺気量位に移ったため, FRCレベル以上の圧量曲線が術前に比べてより陰圧, 低肺気量方向に移動したと考えられた. 以上の変化は, 肺切除により肺容量は減少するが, 胸腔の容量はほとんど変化しないために, 両者に容量アンバランスが生じるために起こったと考えられる. この障害は肺切除による肺容量の減少, 胸壁障害及びこれらに付加して起こる換気障害である. |
