Abstract : |
現在, A-Cバイパス術においては自家大伏在静脈や内胸動脈が一般的に用いられており人工血管の使用は困難とされている. 今回われわれは従来のグルタールアルデハイド(GA)に代わりエポキシ化合物(PGPGE)で架橋した, ヘパリン徐放性の小口径人工血管を開発し, 動物実験でA-Cバイパスグラフトとしての可能性を検討した. 成犬の頸動脈を蒸留水処理後, 2~5%プロタミン水溶液を内腔に注入し, 管腔を膨らませつつ外側より5%PGPGE水溶液で架橋した. 次に1%ヘパリン液中で, グラフトと結合したプロタミンにヘパリンをイオン結合させた. 予備実験として成犬5頭の頸動脈に内径2~3mm, 長さ5~7cmのグラフトを植え込み経時的に採取して組織学的検討を行った(A群). 次いで成犬8頭に内径3mmのグラフトでA-Cバイパスを行った(B群). グラフトの開存性は定期的に血管造影を施行して確認した. A群は最長177日, B群は最長113日の観察期間で全例が開存していた. A群で得られた組織所見は良好な内膜治癒を示した. グラフト造影でも壁の不整や動脈瘤様拡張は見られなかった. 小口径の人工血管の条件としてコンプライアンス, 抗血栓性, 良好な内膜治癒などが重要視されている. PGPGE架橋の本グラフトはGA架橋と異なり生体血管のコンプライアンスを保ち, しかも強靱である. 更にヘパリン化により, 新生内膜被覆までの一時的抗血栓性が賦与されている. 今回の検討でも100%の開存率と良好な治癒を示し, 自家血管に代わり得るA-Cバイパスグラフトとして期待できる. |