アブストラクト(35巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 晶質性Cardioplegia液投与中の心筋内電解質移動に関する実験的研究
Subtitle :
Authors : 前田世礼
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 8
Page : 1096-1106
Year/Month : 1987 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Cardioplegia(CP)液投与中の心筋内電解質移動及びその心筋保護効果に及ぼす影響について実験的検討を行った. 雑種成犬を用い, 常温(37℃)CP群(I群, n=5)と低温(4℃)CP群(II群, n=9)にわけた. CP液には血管外に漏出しないindocyanine green(ICG)を混じ, 冠静脈よりの排液中の血液の占める割合を知るための指標とした. 冠静脈よりの排液中の電解質及びICG濃度を経時的に測定し, これより心筋組織での電解質の移動量を求めるICGクイアランス法を開発し, K, Na, Ca及びMgの移動量を算出した. 心筋内電解質の経時的移動量及び総移動量は各電解質ともII群で有意に少なかった. 心停止までの時間はI群60±18秒, II群40±8秒(mean±SD)で後者が有意に(p<0.05)短かかった. 心停止に至るまでの電解質移動量の総移動量に対する割合は, 各電解質とも約80~90%であり, 且つ各電解質においても両群間に有意の差を認めなかった. 心停止に至った時の排液中K濃度は15~16mEq/lで両群間に差を認めなかった. 心停止までの時間と心停止に至るまでのKの流入量との間に有意の(p<0.05)正の相関を認めた. 電解質移動量と心筋保護効果との関係において, Naの総流出量と心筋水分含有率(p<0.05), Kの総流入量, Na及びCaの総流出量とCPKの最高値(p<0.02)との間に有意の正の相関がみられた. 以上の結果, CP液投与中の心筋内電解質移動はほとんどが心停止に至るまでに起こり, 且つ低温により, これが抑制されることが示された. またCP液投与中の心筋内電解質移動は心筋保護効果に影響を及ぼすことが示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Cardioplegia, 電解質濃度, 電解質移動, 心筋保護法
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