アブストラクト(35巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 70歳以上の高齢者における内胸動脈グラフトを用いた冠動脈バイパス術の検討
Subtitle :
Authors : 末広茂文, 清水幸宏, 岩岡聡, 寺井浩, 小浜正博, 高梨秀一郎
Authors(kana) :
Organization : 関西労災病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 8
Page : 1126-1132
Year/Month : 1987 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 70歳以上の高齢者10例に対し内胸動脈グラフト(IMAG)を用いた冠動脈バイパス術(CABG)を施行し, 高齢者におけるIMAG使用の可否について検討した. 年齢は70~75歳(平均72.1歳), 男性6例, 女性4例で, 2~5枝(平均3.1枝)のCABGを行った. IMAGの使用部位はLAD 8例, 対角枝2例で, 他枝には大伏在静脈(SVG)を用いCABGを行った. 1例を術後紅皮症にて失ったが他は全例症状の改善をみた. 70歳以上例のIMAGの動脈硬化の程度を70歳未満例と比較したが, IMAGのfree flowは70歳以上例で73±34ml/min, 70歳未満の16例で57±27ml/minと差を認めず, IMAGの末梢吻合部直下の病理組織学的所見にて内膜の線維性肥厚を認めたものは70歳以上例で9例中3例(33%), 70歳未満例で17例中5例(29%)で頻度に差はなく, 年齢と関係なく肥厚の程度は軽度であった. 術後造影にて70歳以上例ではIMAGは全例良好に開存していた. IMAG使用に伴う手術侵襲の増加の有無につき検討するため, 70歳以上のSVGのみを使用した手術例との比較を行った. IMAG群では3枝, 左冠動脈主幹部病変例が80%を占めSVG群(69%)に比し重症例が多く, バイパス数もSVG群(2.8枝)より多かったが, 手術, 体外循環, 大動脈遮断時間には差を認めず, 術後合併症, ICU滞在日数, カテコラミン使用率などからみた手術成績はIMAG群でむしろ良好であった. 以上のことから, IMAGの動脈硬化性変化は年齢に関係なく軽度であり, IMAGの使用の有無による手術侵襲にも差を認めず, IMAGは70歳以上の高齢者においてもCABGの有用なグラフト材として使用可能であると結論した.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冠動脈バイパス, 高齢者, 心胸動脈グラフト, 大伏在静脈グラフト, 動脈硬化
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