Abstract : |
本研究では2時間20℃の大動脈遮断において, Blood Potassium Cardioplegia(BPC)におけるVerapamil添加の影響を, 特にBPC注入中の冠血管抵抗, 心筋酸素消費量, 再灌流後における左室機能の面から検討した. 雑種成犬12頭を用いI群BPC 6頭, II群BPC+Verapamil(0.5mg/L)に分け, 右心バイパス法を行い, 心仕事量, Max dp/dtを測定した. その後, 低温下に大動脈遮断し, 心筋保護液500mlを30分ごとに注入した. BPC液注入中, 冠血管抵抗, 心筋酸素消費量を求めた. 再灌流後30分頃同様の測定を行い, 心機能の回復率を得た. 冠血管抵抗は, I群で初回から4回目まで増加傾向にあり, II群は安定していた. 2回目のBPC液注入時はI群0.33±0.07mmHg. min/ml, II群0.27±0.01mmHg. min/mlであった(p<0.05). 心筋酸素消費量も, I群が次第に減少するのに対しII群では安定して低く, 2回目注入時では1群1.99±0.48ml/100g/min, II群1.29±0.50ml/100g/minとII群で低かった(p<0.05). 再灌流時の自然拍動率も, I群16.7%に対しII群では83.3%とII群で高かった(p<0.05). 心機能回復率は, I群42±18%, II群75±11%とII群で高かった(p<0.01)が, Max dp/dtにおける回復率は, 有意差を認めなかった. 以上より得た結論は, Verapamil添加のBPCは, 1)冠血管抵抗を低く安定させBPCの良好な灌流が可能であった. 2)心筋酸素消費量も低く安定させ心筋保護が良好であった. 3)2時間の大動脈遮断において左室機能の良好な改善をもたらし, より優れた心筋保護法であることが認められた. |