Abstract : |
最近の11年間に14例の小児心疾患手術後の乳糜胸の合併を経験し, 11例に保存的治療を, 3例に外科的治療を行い, 全例治癒せしめた. 保存的治療の内容は胸腔穿刺, 胸腔ドレナージ, 脂肪制限食, 中鎖脂肪酸の経口投与, 脂肪乳剤の静脈内投与などで, 外科的治療の内容は再開胸, 損傷リンパ管の結紮であった. 症例の年齢は生後7日~6歳8ヵ月(平均3.1歳), 術式の内訳は, 動脈管離断術及び結紮術6例, 左側Blalock-Taussig手術3例, 右側Blalock-Taussig手術, subclabian fiap aortoplasty, 大動脈左肺動脈側端吻合術, 肺動脈狭窄症根治手術, ファロー四徴症根治手術各1例で, 全心疾患手術症例の1.1%であった. 外科的治療を行った3例の内2例は胸腔ドレーンにより3~4cc/kg/hrと多量の乳型の排液が見られたため, 他の1例は胸腔ドレーンより1cc/kg/hrの乳糜の排出が見られ, 5日間の保存的治療にて改善傾向がみられなかったため再開胸リンパ管結紮術を施行, 術後排液量の著減をみた. 保存的治療の有効例では脂肪制限開始後, 排液量は著明に減少し, ほとんどの症例は4日以内に排液量が0.1cc/kg/hr以下に減少した. 保存的治療のみで治癒した症例の術直後の体重当たりの排液量は0.2~2.0cc/kg/hrであった. また, 経過中血清蛋白の測定が行われた9例のうち6例に, 0.2~2.0g/dl平均1.3g/dlの血清蛋白の低下を認めた. これらのことから術後乳糜胸合併例では, 速やかに脂肪制限などの保存的治療を開始することが必要不可欠であるが, 体重及び時間当たりの排液量が2cc/kg/hrを越える症例, あるいは4日間の保存的治療で無効な症例では, 体液及び栄養管理の面から, 早期外科治療が望ましいと考えられた. |