Authors : |
小林博徳, 北村惣一郎, 大山朝賢, 河内寛治, 高義昭, 森田隆一, 西井勤, 谷口繁樹, 関寿夫, 井上毅 |
Abstract : |
内胸動脈(IMA)における動脈硬化症の頻度を知る目的にて, 冠動脈バイパス手術を受けた冠動脈硬化症の患者51例と川崎病の患者3例の合計54例でグラフトとして使用したIMA残余部の組織学的検討を行った. 更に, 動脈硬化度と年齢, 危険因子との関係などについて検討した. 動脈硬化の指標としてR=内膜/中膜の比を求め, 動脈硬化度をSimsらの報告を参考にして, grade I:R<0.1(insignificant), grade II:0.1≦R<1.0(mild), grade III:1.0≦R<3.0(moderate), grade IV:R≧3.0(severe)の4つに分類した. Rは最小0.05~最大0.96(平均0.22±0.25)であり, 硬化度別ではgrade I 24例(44%), grade II 30例(56%)であったが, 動脈硬化として有意であるgrade III, IVは認めなかった. grade IIの年齢57.1±5.8歳は, grade Iの年齢46.8±17.0歳より有意に高く, また年齢(X)とR(Y=logR)にはY=-1.3+0.0078X, r=0.277(p<0.05)の有意の相関がみられた. しかし, 年齢が高くなってもRそのものは低値にとどまる. 動脈硬化度と危険因子との間には有意の相関を認めなかった. 冠動脈バイパス手術のグラフトとしてIMA使用が不適切となる場合は極めてまれであり, IMAグラフトは危険因子とはほとんど無関係に, 高齢者においても使用可能であると思われる. 本報告は日本人におけるIMAの動脈硬化性病変の組織学的検討としては初めてのものである. |