アブストラクト(35巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 進行肺癌に対する外科治療の臨床的検討
Subtitle :
Authors : 小泉潔, 庄司佑, 山手昇, 田中茂夫, 松島伸治, 五味淵誠, 向井佐志彦, 笹井巧, 児玉行弘, 塩田晶彦
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 9
Page : 1705-1711
Year/Month : 1987 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 原発性肺癌139例中, UICC・TMM病期分類(1978)12)の病期III以上の進行肺癌は78例(56%)で, それらの術後生存と問題点につき, 追跡調査を行い, 非小細胞癌例を中心に検討を加えた. 病理病期IIIの非小細胞性肺癌は71例で, その50%生存期間(以下MST)は, 52週で, 1年生存率50.2%, 3年生存率23%, 5年生存率は15.4%であった. 組織型別では, MSTは扁平上皮癌33週, 腺癌52週であるが, 3年生存率は各々31.7%, 13.1%, 5年生存率は31.7%, 0%と扁平上皮癌例に良好な生存率が得られた. 病期IIIを規定する, TNM因子別にみると, T3N0-1群の長期予後が良好であった. 縦隔リンパ節郭清別の生存率は, R1, R2群のMSTは61週で, 治癒度別検討でも, 準治癒切除以上群では, MSTは97週と非治癒切除群の17週に対して明らかに良好な長期予後が得られ, 3年生存率36.9%, 5年生存率29.6%であった. 準治癒切除が得られるかどうかの術前評価に, 予後が左右されるといえた. しかしながら, 術後1年生存率をみてみると, R2群がR1群に対して有意に不良な術後経過を示している. これは, 術後急性期から1年間における早期死の問題を提起する. III期, IV期肺癌例の1年以内の死亡例は20例で, これらの症例の反省, 改善が今後の重要な問題となった. 拡大合併切除例は, III期71例中29例(41.8%)を占め, そのうち21例(72%)が, 扁平上皮癌であった. 準治癒切除を得られた群では, MST 57週, 5年生存率32.4%を得ている. 合併切除臓器では, 心膜, 胸壁の頻度が高く, 5年生存率では各々 33.3%, 28.6%を得ているが, 二臓器以上, 特に, 心・大血管合併切除例は不良で, 2年以上の生存例を得ていない. 更に, 合併切除にもかかわらず非治癒に終わったものは, MST17週で, 1年生存も得られていない. すなわち, 非治癒切除に終わった例ではその予後は極めて不良であり, reduction surgeryとしての意義は認め難かったが, 反面, 他臓器浸潤による生物学的・物理学的影響からの離脱という面では, 臨床的な意義が存在すると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 進行肺癌, 拡大合併切除, 術後合併症
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