Authors : |
高木勇****, 川副浩平*, 小坂井嘉夫*, 小原邦義*, 賀来克彦*, 鬼頭義次*, 公文啓二**, 田中一彦**, 木村玄次郎***, 藤田毅* |
Abstract : |
透析療法の進歩に伴い, 透析患者の手術適応は拡大され, 国立循環器病センターにおいても, 昭和52年7月より昭和60年8月までに, 透析患者6例に対して開心術を施行し, 5例を救命した. 6例はいずれも弁膜症例で, 全例慢性腎不全のために血液透析を受けており, 手術までの透析期間は6ヵ月から6年9ヵ月であった. 手術は中等度低体温併用体外循環を用い, 5例に体外循環中に透析回路を組み入れて透析を行い, 1例は術中に腹膜透析を併用した. 術式は3例に人工弁置換術, 他の3例に弁膜形成術を施行した. 術後ICUでは, 全例腹膜透析にて水分・電解質管理を行い, 平均6.2日で血液透析を再開した. 1例(17%)を術後10日目に脳出血により失った以外, 他の5例の術後経過は良好であった. しかし, 遠隔期死亡を3例に認め, 1例は術後5年目に脳出血により, 1例は術後2年1ヵ月目に人工弁感染により, 他の1例は持続的腹膜透析を施行中に腹膜炎を併発し死亡した. 現在では, 種々の人工腎臓療法を組み合わせることにより, 術前・術中・術後の水分・電解質管理を厳重に行えば, 透析患者に対しても, 開心術を安全に施行できるようになった. 従って, 心臓外科領域においても非透析患者の手術適応に準じて良いと考えられる. しかし, 遠隔期においては, 透析患者特有の臨床病態に基づく種々の問題点があり, これらを十分考慮にいれた注意深い経過観察が必要であると思われる. |