アブストラクト(35巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 前下行枝病変に対する冠動脈バイパス脳-内胸動脈グラフトと大伏在静脈グラフトの比較検討
Subtitle :
Authors : 須磨久善, 武内敦郎
Authors(kana) :
Organization : 大阪医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 9
Page : 1735-1743
Year/Month : 1987 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 18ヵ月間に内胸動脈グラフト(IMAG)を用いた冠動脈バイパス術を30例に施行し, 同時期に施行した大伏在静脈グラフト(SVG)のみによるバイパス30例を対照として手術時間, 早期成績, 術後造影所見などにつき比較検討した. 対象例はすべて前下行枝へのバイパスが行われたもので, IMAGは全例前下行枝へ吻合し, 他枝へのバイパスにはSVGを用いた. 患者の年齢はIMAG群55±9歳, SVG群61±8歳でSVG群が有意に高齢であった. 不安定狭心症, 急性心筋梗塞はSVG群に多かったが有意差はなかった. 緊急手術はIMAG群0に対しSVG群6例と有意に後者に多かった. SVG群に左主幹部病変が多く含まれた以外は病変枝数, 左室駆出率に差はなかった. 早期死はIMAG群1例, SVG群2例で遠隔死はともになく, new Q波をIMAG群1例, SVG群2例に, また, 術後狭心症の再発をIMAG群2例, SVG群1例に認めた. 患者1人当たりの冠動脈側吻合数はIMAG群2.2, SVG群2.0で, その平均手術時間は270±56分, 237±60分, 大動脈遮断時間は58±27分, 46±16分ですべて有意差はなかった. 前下行枝への吻合に要した大動脈遮断時間はSVG群16分に対し, IMAG群28分と有意に長かったが許容範囲内にとどまった. 術後24時間の出血量はIMAG群434±319ml, SVG 298±161mlで有意差はなく, IMAG採取に伴う出血のための再開胸はなかった. 術後平均8週の造影で前下行枝へのIMAGは95%(21/22本), SVGは91%(20/22本)開存した. 前下行枝近位部の狭窄病変は術後IMAG群の30%, SVG群の83%に進行を認めた. 以上, 本邦人におけるIMAGの使用が手術時間, 手術侵襲を増加させるものではなく, その早期成績も良好であることが示され, 今後の積極的な使用が可能であることが明らかとなった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ACバイパス手術, 内胸動脈グラフト, 大伏在静脈グラフト, グラフト開存率, 手術時間
このページの一番上へ