Abstract : |
経皮的冠動脈形成術(PTCA)の導入に伴う冠動脈バイパス術(CABG)施行例の病像, 治療内容の変化につき検討した. CABG例100例を対象とし手術時期により, I群:PTCA開始前のCABG例15例, II群:PTCA初期100例施行期間内のCABG例35例, III群:101~200例施行期間内の26例, IV群:201~300例施行期間内の24例の4群に分け, CAG所見, 手術成績を比較し, PTCAの治療成績との関係を検討した. その結果, 1枝, 2枝病変例の占める割合はI群60%, II群49%, III群23%, IV群21%とPTCA症例の増加に伴い減少し, 3枝, LMT病変例はI群の40%からIV群の79%と著明に増加した. 冠動脈完全閉塞例はI群では4例(27%)であったが, 次第に増加しIV群では14例と半数以上を占め, 心機能的にも重症例が多くなっていた. 平均バイパス数はI群2.5, II群2.5, III群2.7, IV群3.4, 3枝以上CABG例の割合は各々47%, 51%, 65%, 75%と多枝バイパス例の増加をみた. 待機的PTCAからCABGへの移行例は初期PTCA 87例中12例(14%), 中期80例中10例(13%), 後期70例中6例(9%)であり, 移行の理由としては狭窄解除失敗例が23例と最も多く, 合併症に対する緊急手術例は1例であった. PTCAの成績は1枝, 2枝病変例では成績の向上をみたが, 3枝病変例については初期後期を通じて成功率が低かった(46例中完全成功13, 部分成功15). 以上の結果からみてPTCAの導入に伴いCABGの対象となる症例は重症の多枝バイパス必要例が主体となるものといえ, 合併症に対する緊急手術の問題も含め今後の外科側の対応が重要と考えられる. |