アブストラクト(35巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : カテーテルによる心室中隔穿孔閉塞の実験的研究
Subtitle :
Authors : 八田健, 志田力, 宮下勝, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 10
Page : 1809-1817
Year/Month : 1987 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔(VSR)に対する急性期手術は, 穿孔部周囲心筋の脆弱性や左室心筋収縮力の減退によって, その死亡率は今なお50%前後と, 決して満足できるものではない. 従って, できれば慢性期に手術を行うことが望ましいが, VSRの径が大きい場合には, 右室収縮不全に左右短絡による容量負荷が加わって内科的に管理が極めて困難となり, 緊急手術以外救命の方法がないというジレンマがある. このような症例に対して, 保存的手段によって急性期を乗り切り, 安定した慢性期になって根治手術を行うための手段として, バルーンカテーテルによるVSRの一時的閉塞法を検討し, 更に半永久的な閉塞を期待してアンブレラ法を考察し実験的に検討した. バルーンカテーテル法は円盤状のバルーンをもつカテーテルを, あらかじめ立体的J字状に形成したカテーテルシース内を頸静脈から挿入してVSRを通過せしめ, 左室内でバルーンを膨らましてVSRを閉塞する試みである. 実験的にVSRを作成した9頭の犬についてバルーンによるVSR閉塞を試み, 7頭において成功した. 2頭における不成功の原因は, 1頭では手技の未熟, 他の1頭ではバルーンの直径がVSRの直径より小さかったことであった. アンブレラ法は一対の円錐状のアンブレラを, アンブレラ挿入器によって挿入し, VSR部を左室側及び右室側の両面より挟み込むようにして, 半永久的に閉塞する方法である. 急性実験を行い検討した結果, 初期の9頭では1例しか成功しなかったが, 装置及び手技の改良により, 最近の8例では完全閉塞5例, 不完全閉塞2例, 不成功1例と成績は向上し, 手技的にはほぼ完成されたと考えられた. また生存実験例では, VSRは器質化した結合組織によって覆われたアンブレラにより, 完全に閉塞されていた. バルーンカテーテル法及びアンブレラ法は, 死亡率の高い急性心筋梗塞後のVSRに対する1つの救命手段となり得る可能性を示したものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 急性心筋梗塞, 心室中隔穿孔, バルーンカテーテル法, アンブレラ法
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