アブストラクト(35巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁閉鎖不全症の術前心機能及び冠血流と弁置換術後心機能の関係に関する研究
Subtitle :
Authors : 河内寛治, 北村惣一郎, 大山朝賢, 小林博徳, 高義昭, 森田隆一, 西井勤, 谷口繁樹, 関寿夫, 井上毅
Authors(kana) :
Organization : 奈良県立医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 10
Page : 1836-1842
Year/Month : 1987 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対し大動脈弁置換術(AVR)後の心機能の改善性とその限界について, 術前後の左室容量解析, 並びに冠血流量を検討した. 対象はARに対しAVRを行った18例で, 術前EF 0.35以上をI群14例, 0.35未満をII群4例とした. 術後検査は平均7±2ヵ月に施行した. 1. 左室容積, 壁厚(h), 心筋重量(LVM)の関係:I群では, 術後左室収縮末期容積, 及び拡張末期容積は著明に減少し, 正常値近くまで回復した. hは術前軽度高値を示し, 術後も不変であった. そのためにLVMは術後減少するがいまだ異常高値を示した. II群では, I群より左室容積, LVMは異常高値を示し, 術後, 左室容積, LVMは減少するが, なお異常高値にとどまった. 2. 収縮期機能:I群では, 術前低値を示したEF, mean velocity of circumferential fiber shorteningは術後正常範囲まで増加し, 収縮期機能の改善が認められた. これら指標がより異常低値を示したII群では, 収縮期機能の改善は不良であった. 3. 冠血流動態:冠状静脈洞血流量(CSF)は術後LVMの低下に伴い, 減少を示したが, 単位心筋当たりのCSFは増加した. この心筋当たりのcoronary flowの回復が心筋能の改善に重要な因子となっているものと考えられた. 4. 術後収縮期機能と術前の左室容積, h, LVM及び冠血流量との関係(reversibilityの限界):術後の収縮期機能と術前のLVESV, LVEDV, h, LVMとはいずれも有意の負の相関が得られ, 術前LVM 350g/m2以下であれば術後収縮期機能の改善が得られると考えられた. また, 術前の心筋当たりのCSFとも有意の正の相関があり, 術前CSF 35ml/min/100gLV以上であれば, 術後正常範囲内の収縮期機能の改善が期待されるものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁閉鎖不全症, 大動脈弁置換術, 冠状静脈洞血流量, 収縮期機能, 心機能
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