Abstract : |
自己弁感染による感染性心内膜炎57例を対象として, 外科治療・内科治療の結果について報告した. 外科治療群32例(入院死亡4例, 遠隔死亡4例, 遠隔生存24例), 内科治療群25例(入院死亡6例, 遠隔死亡6例, 遠隔生存9例, 不明4例)であった. 内科治療のみで生存退院した19例のうち10例は退院時NYHA II~IIIで, この10例中5例は遠隔期に心臓死をした. 外科治療群の術前診断に心血管造影を19例(59.8%)に行ったが, 重症例・疣贅の確認された症例・感染活動期症例は, 心エコー図法のみで手術を行い, 緊急例で術前検査不十分な症例は術中心エコー図法を行っている. 感染活動期手術は11例(入院死亡2例), 心不全・塞栓症を原因として緊急手術を18例(入院死亡3例)に行った. 術後遠隔死亡4例の死因は, 再手術2例, 突然死1例, 脳出血1例であった. 術後遠隔生存24例のうち3例はNYHA IIで他の21例はNYHA Iに改善している. 外科治療群のうち弁尖部以外に感染が波及拡大していた症例は7例あり, 大動脈弁弁輪部感染瘤4例(入院死亡2例), 僧帽弁弁輪部左室内感染瘤1例, 僧帽弁弁輪部左房後壁感染波及1例, candida albicansによる三尖弁及び弁輪部感染1例である. 6例は感染活動期に手術を行ったが, 1例は心エコー図法で大動脈弁弁輪部の感染瘤の拡大の様子を連日注意深く観察しながら抗生剤の投与を続け, 感染が治癒した後に手術を行うことができた. 以上の外科治療群, 内科治療群の比較から, NYHA II以上に状態の悪化した感染性心内膜炎症例は外科治療を考慮すべきであり, 切除可能な弁尖部のみでなく, 弁輪部や心房・心室・大血管壁内にも感染巣の存在する症例は, 感染の拡大傾向, 血行動態, 塞栓症に十分注意して緊急手術可能な態勢で感染の治療を続け, できれば感染治癒後の手術が望ましいと考えられた. |