アブストラクト(35巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠動脈バイパス術後急性期における心房ペーシングの有用性に関する研究
Subtitle :
Authors : 宮城康夫, 北村惣一郎, 大山朝賢, 河内寛治, 小林博徳, 森田隆一, 西井勤, 谷口繁樹, 関寿夫, 井上毅
Authors(kana) :
Organization : 奈良県立医科大学第3外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 11
Page : 1956-1963
Year/Month : 1987 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠動脈バイパス術(CABG)施行例125例に, 術後急性期において心房ペーシング治療を行い, その有用性について検討を行った. 対象患者年齢は, 24~75歳で平均55.6歳であり, 男性101例, 女性24例であった. ペーシング治療を行った理由は心拍数低下によるものが多く, 他に, 上室性不整脈, 心室性期外収縮などであった. また, ペーシング治療群は非治療群に比し, 年齢が有意に高かった(p<0.05)が, バイパスグラフト数, 人工心肺時間, 大動脈遮断時間に有意差は認められなかった. また, 術前プロプラノロール使用群は非使用群に比し有意(p<0.05)に術後自己心拍数が低下していたが, プロカインアマイド, ジソピラミド, ジルチアゼムなどの使用群と非使用群では心拍数に有意差を認めなかった. 人工心肺終了後4, 8, 12, 24時間目においてペーシング作動時と非作動時における血行動態の変化を41例について検討したが, すべての時間帯において有意に心拍出量, 平均動脈圧, 分時左室仕事量を増加させた(p<0.01~p<0.05). 自己心拍数が毎分60~90回のとき, 約20%増のペーシングによって有意に血行動態を改善させた. しかし, 自己レートの40%増にすると心係数を有意に減少させた. また, 心筋梗塞のある群, 術前LVEDPが12mmHg以上群, 術前CI 2.51/分/M2以上群は自己心拍数20%増のレートにおいては心係数を増加させるが, 40%増のレートにすると心係数を有意に減少させた(p<0.01~p<0.05). 従って, CABG術後心房ペーシング治療は, 自己心拍数毎分90回以下, ペーシングレート20%増において安全, 且つ有用であると判定し, 現在ほぼroutineに心房ペーシング法を術後管理に応用している. なお, ペーシングによる心筋の代謝に関する検討は今回は行わなかったが, この範囲での心房ペーシングにより, 心筋虚血が進行したという例は1例も経験しなかった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : A-Cバイパス術, 心房ペーシング, 心係数, 平均動脈圧, 分時左室仕事量
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