アブストラクト(35巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 弁膜症に合併した肝障害の指標についての研究-特にICG血中半減期t1/2値の臨床的意義-
Subtitle :
Authors : 吉井新平, 江口昭治
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 11
Page : 1987-1998
Year/Month : 1987 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 弁膜症に合併した肝障害の指標としてIndocyanine green(ICG)血中半減期t1/2値をとりあげ, その臨床的意義につき検討した. 54例の後天性弁膜症開心症例を対象とし, t1/2値により, I群:t1/2 6分未満群25例, II群:t1/2 6分以上10分未満群18例, III群:t1/2 10分以上群11例に分けた. 32例より得られた肝組織所見と併せ, 術前後の病態を検討し, 以下の結論を得た. 1. ICG t1/2値は血行動態の悪化, 特にNYHA心機能分類での重症化, 三尖弁閉鎖不全の存在, 混合静脈血酸素飽和度の低下, 平均右房圧の上昇, 心拍出量の低下により延長し, 肝の線維化の程度とも密接に関連していた. 更にt1/2値延長例は呼吸機能, 腎機能, 凝固能の低下もみられ, t1/2値が心不全に伴う全身臓器機能評価のパラメーターの1つとして有用と考えられた. 2. 術後経過の分析から, 臓器不全について, 7項目の診断基準を作成し, 術後2週以内に5項目以上の合併例を多臓器不全(Multiple Organ Failure:MOF)例としたところ, 各々の項目については, t1/2値延長群ほど高率に臓器不全を合併し, また1症例当たりの不全項目数はI群0.52±1.05, II群2.56±1.69, III群4.00±2.00と3群間に差を認めた. III群は45%にMOFを発生し, またMOFに陥った7例中6例(86%)が病院死した. 3. 術後は延長群ほどICG t1/2値の回復は遷延した. 以上より, 弁膜症においてはICG t1/2値は肝障害のみならず, 他の臓器機能低下とも密接に関連しており, 術後MOF発生予測の一指標となり得ると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肝機能障害, ICG血中半減期, 開心術後多臓器不全, 手術至適時期
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