Abstract : |
家兎摘出心と独自に開発した灌流装置を用いてworking heart modelを作成し, 教室で臨床使用しているK+=20mEqのmodified GIK液による180分間虚血下心静止の際の至適心筋温を検討する目的で, 心筋温5, 10, 15, 20, 25℃の5群各6例について心血行動態及び心筋代謝の面から検討を加えた. 虚血下心静止180分後の心血行動態の回復は15℃群が最も良好で, 再灌流後30分での心拍出量の回復率はpreload 5, 10, 15mmHgの時各々78±12%, 70±8%, 62±15%であり, 再灌流後60分には各々93±20%, 84±16%, 80±19%にまで回復したが, preloadの増加に伴って回復率が低下し, 180分間の虚血による心筋障害の存在をうかがわせた. 再灌流直後のPA排出液中の乳酸, CPKの濃度は低温群ほど低く, 心静止中は低温群ほど心筋代謝が抑制されていたが, 再灌流後30分, 60分における心血行動態の回復とは相関せず, 低温による障害(cold injury)の存在が示唆された. 再灌流後30分, 60分において心血行動態の回復が良好であった例では酸素摂取, ブドウ糖摂取が多く, また乳酸の産生も少なく, 心筋代謝はより好気的であったが, PA排出池中の乳酸の排出の増加は再灌流後60分の時点でも嫌気的代謝が存在することを示していた. 臨床例では心静止中でもnon coronary collateral flowなどの影響で一定の心筋温を保つことが困難とされているが, modified GIK cardioplegia法での長時間虚血下心静止における至適心筋温は15℃前後と考えられた. |