アブストラクト(35巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高含水ハイドロジェル代用心膜の有用性の検討
Subtitle :
Authors : 杉和郎, 江里健輔, 毛利平
Authors(kana) :
Organization : 山口大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 35
Number : 12
Page : 2122-2127
Year/Month : 1987 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心膜の代替として種々の生体材料や合成素材が応用されてきたが, 多くは周囲との癒着, 高度の炎症反応あるいは変性, 脱落が起こるものが多く, 満足すべきものは少ない. われわれは, 南部(日本石油株式会社中央研究所)の開発した新しい高含水ハイドロジェルの薄膜を代用心膜として用い, その有用性を検討したので報告する. 雑種成犬15頭を用い, 約3×3cmの心膜を切除し, 欠損部を同じ大きさの肉厚0.5mmのハイドロジェル膜を用いて補填した. 移植後1, 3, 6ヵ月時に各5頭を屠殺し, 肉眼的及び検鏡的に観察した. 移植代用心膜は心外膜, 臓側胸膜ともに癒着せず, 縫合部は宿主心膜に強固に固定され, 断裂や脱落は起こらなかった. 肉眼的に, わずかに黄色に変色したものもあったが, 代用心膜の性状, 大きさは不変であった. 走査電子顕微鏡的観察では, ハイドロジェル表面固有の整然とした配列構造は保たれていた. また, 移植代用心膜は, 観察期間の延長とともに, 宿主心膜より進展する疎な結合織で両面より被覆されていた. 代用心膜補填直下の心外膜は, 薄く疎な結合織で覆われており, 冠状動静脈は透見できなかった. その被覆層と心外膜との結合は疎で, 冠状動静脈を損傷せずに容易に剥離することができた. 新しい高含水ハイドロジェル膜は変性も少なく, 癒着防止に優れた効果があり, 臨床への応用も可能であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 代用心膜, 高含水ハイドロジェル, 癒着防止
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