Abstract : |
体外循環中及び後の限外濾過が開心術後の経過に及ぼす効果について検討した. 対象は心房中隔欠損閉鎖術(ASD)9例, 冠動脈バイパス術(ACBG)11例, 僧帽弁置換術(MVR)11例で, それぞれ限外濾過を施行したS群と非施行のC群とに分けた. 限外濾過量はASDでは1,463±330ml, ACBGでは1,950±784ml, MVRでは2,280±829mlであった. 体外循環総バランスではASDでS群-295±213ml, C群+212±318mlとS群の方が有意にマイナス・バランスとなった(p<0.05). ACBGではS群+471±364ml, C群+645±277ml, MVRではS群+781±281ml, C群+1,203±345mlと有意ではないがS群の方が低値を示した. 心機能的には両群間に差は認められなかった. 末梢循環状態を反映するといわれる血清ピルビン酸, 乳酸を体外循環前から後にかけて測定した. 両値ともに体外循環終了直後ないし2時間後を最高値として以後漸減した. ASDでは体外循環終了直後からS群の方が低値を示し, 特に体外循環終了2時間後のピルビン酸(p<0.05), 8時間後のピルビン酸(p<0.01), 8時間後の乳酸値(p<0.05)はS群C群間に有意差が認められた. ACBG, MVRでは有意差は認められなかった. 限外濾過により体外循環中の水分負荷は軽減されるが, ピルビン酸, 乳酸値の低下に示される末梢循環の改善を得るには, 限外濾過の併用により体外循環総バランスをマイナスにするなど十分な水分負荷の軽減が必要である可能性が示唆された. |