アブストラクト(36巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 術前Dobutamime負荷試験による僧帽弁狭窄症の心循環機能の評価 ―術後血行動態との関連性について―
Subtitle : 原著
Authors : 佐藤洋, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 1
Page : 23-30
Year/Month : 1988 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 僧帽弁狭窄症(MS)手術症例31例に対し術前心エコー検査下及び心カテーテル検査下にDobutamime(DOB)負荷を施行し, その反応性と術前後の血行動態の変化を比較検討した. なお, 左室容量に関する検討は心エコーによる計測値から行った. 術前DOB負荷によりSVIが増加した症例をI群(n=16), SVIが減少した症例をII群(n=15)に分類して検討したところ, 術前DOB負荷時におけるESVIの変化率(%ΔESVI)には両群間に差がなかったが(I群-40.1±12.2%:II群-44.7±10.8%, NS), EDVIの変化率(%ΔEDVI)はI群に比しII群で有意に大きく(I群-8.6±6.4%:II群-26.3±9.7%, p<0.001), すなわち, その減少の程度が強く, EFの変化率(%ΔEF)はI群に比しII群で有意に小さかった(I群21.4±7.2%:II群14.0±4.7%, p<0.01). 術前心カテーテル検査下のDOB負荷においては, 負荷によりPCmは両群ともほぼ同程度の上昇を示したが, PAmはI群に比しII群の方がより大きく上昇し, CIの増加はより少ない傾向にあった. 両群における術前後安静時血行動態及びCI, EFの推移をみると, 安静時PCmは術後両群とも有意に減少し, 術前後において両群間に有意差を認めなかったが, PAmの術後推移はI群では有意に減少したのに対し, II群では術後も高値を示す症例があり, 術前後で有意差を認めなかった. またPVRIは術後I群では減少したが, II群では増加例が多く, 術後II群ではI群に比し有意に高値を示した(p<0.001). CI, EFは術前両群間に有意差なく, 術後I群では有意に増加したが, II群では有意な変化を示さなかった. 両群における術後経過を比較すると, I群に比しII群では術直後長期間のカテコラミン投与, あるいはIABPの使用を必要とした. 以上の結果より, MSにおける術前DOB負荷は, 術後の血行動態や心機能の改善度を術前に推測する上で有用であり, 更に術後経過の良否を術前に判定する手段としても使用し得ると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 僧帽弁狭窄症, ドブタミン負荷, 心エコー, 術後血行動態, 術後心機能
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