Abstract : |
大動脈冠動脈バイパス術に用いる大伏在静脈の適切な採取, 保存に関する研究は術後のgraftの開存率に関与するため非常に重要と考え, 本静脈を臨床の大動脈冠動脈バイパス術時に採取し, 各種条件下に超微形態学的検討を加えた. 手術時に採取した大伏在静脈の一部を直ちに前固定したcontrol群, 過伸展を加えたA群, 内圧を100mmHg, 又は300mmHg加えたB, C群, 4℃cK+:20mEq/L GIK液で60分保存したD群, 25℃ cK+:20mEq/L GIK液使用のE群, 4℃ cK+:40mEq/L GIKのF群, 25℃ cK+:40mEq/L GIK液保存のG群, 冷却ヘパリン加血液保存のH群, 25℃cヘパリン加生食で保存のI群に分けた. これら各条件下の大伏在静脈片を1mm3細片にこし2.5%glutaraldehydeに前固定し, 表1のごとく処理し電子顕微鏡にて観察した. その結果はH群及びD群:excellent, A, B, E及びF群;fair, C, G及びI群:poorという総合評価であった. 低温環境とヘパリン加血液又はK+:20mEq/L GIK液環境では内皮細胞のWiebel palade顆粒, 基底膜が保持され, 且つ細胞基質の保持, 線維成分の安定化に寄与していると考えられた. 25℃+高K+ GIK液では内皮細胞の破壊, それに伴う中皮細胞, 膠原・弾性線維の変性が著明であった. また過伸展群では内皮細胞の剥離・変質などが著しく, 過圧群でも内皮細胞のglicocalix layerの破壊を伴う線維成分の失調が顕著であった. 以上より大伏在静脈グラフトの適切な保護の1方法としては過伸展, 高圧環境をさけて, 低温, ヘパリン加血液又はK+ 20mEq/L GIK液内で一貫して保護する方法が優れていると考えられた. |