Abstract : |
昭和49年4月より60年12月までに当科で経験した転移性肺腫瘍の手術症例40例を対象として, 予後に影響を及ぼす因子別に術後遠隔成績の検討を行った. 全例に51回の開胸術を行い, 術式は部分切除が最も多く34回(61%)施行している. 全例の5年生存率は47%と良好な成績であった. 原発巣の種類別では, 癌腫の5年生存率51%, 肉腫の4年生存率36%であった. 病巣の数では, 単発例の5年生存率52%, 一側多発例の4年生存率43%, 両側多発例の5年生存率41%であった. 病巣の部位別では, 一側肺及び両側肺症例の5年生存率はそれぞれ48%, 41%であった. 原発巣の手術から転移巣発見までの期間(disease-free interval)を1年未満, 1年以上, 2年以上, 3年以上の4期間に区切って5年生存率を見るとそれぞれ50%, 48%, 50%, 44%であった. Tumor doubling timeが測定できた20例について40日未満, 40日以上の2群での3年生存率はそれぞれ24%, 60%であった. 以上予後を左右する因子別に当科の成績を検討したが, 各予後因子で術後遠隔成績に統計学的有意の差は認められなかった. また, 術式別での予後について, 単発例で部分切除もしくは区域切除, 肺葉切除もしくは全摘を施行した2群の5年生存率はそれぞれ46%, 55%であった. これらの結果より転移性肺腫瘍の手術適応として患者の全身状態が外科的侵襲に耐えられ, 原発巣が十分コントロールされ, 肺以外に転移の徴候がなく, 手術的に根治性が期待できる症例は可能な限り手術療法を試みるべきと考えられた. また, 肺機能温存の面から部分切除を術式の主体とすべきと考える. |