Abstract : |
心移植におけるfree radical induced myocardial injuryの果たす役割を検討する目的で, 雑種成犬25頭(体重10.0~15.6kg)より得た摘出心を, 摘出直後に, ほぼ同体重のrecipientに同所性移植するモデルを用い, superoxide dismutase(SOD)(10mg/kg)とcatalase(CAT)(10mg/kg)をreperfusion直前及び開始後1時間にわたり, 単独あるいは同時に投与した. 対象はA群;Control群(n=7), B群;SOD投与群(n=6), C群;CAT投与群(n=6), D群;SOD/CAT投与群(n=6)の計4群である. 心摘出前(術前値), 体外循環離脱後60分(術後値)の時点に心機能の諸値を測定した. 各群の術後心機能を術前値に対する変化率で比較すると, B~D群はA群に比し有意に(P<0.05)優れていたが, B, C, D群間には有意差が認められなかった. 虚血時, reperfusion時を通じ, 冠静脈洞より採血しmalondialdehyde(MDA), CPK-MBを測定し, それぞれfree radical induced injury, 並びに心筋障害の指標とした. MDAは虚血時には各群とも低値を保ったが, reperfusion開始直後より上昇した. その上昇率はA群に比し, B~D群が有意に(P<0.05)低かった. CPK-MBも, 全経過を通じMDAと本質的に同様の変化を示した. 以上, 今回の実験により得られた結論をまとめると, 1)MDA, CPK-MBの変化より, 心移植において, free radical induced injuryは主にreperfusion時に起こることが示唆された. 2)各群間における術後心機能及びreperfusion時のMDA, CPK-MBの比較より, SOD, CATはfree radical induced injuryの予防に有効であった. しかし, 両者単独投与における有効性の優劣はつけ難かった. |