Abstract : |
僧帽弁置換術(MVR)に際し発生する左室破裂は重篤な合併症であり, 手術成績が安定した今日MVRに伴う手術死亡の最大の原因となりつつある. 今回著者らは僧帽弁輪の石灰化, 後尖の石灰化を有する僧帽弁狭窄症のMVRで2例のMiller I型左室破裂を経験した. 1例は直接縫合にて破裂部を修復できたが, 他の1例は直接縫合後破裂口が拡大したためその修復は極めて困難であった. 心膜パッチにて破裂口を覆うように縫合し圧迫にて止血, 術後早期には, レギチン, ニトログリセリンで後負荷を軽減し, 救命できた. またこの2例において術後に下壁梗塞の発生及び仮性左室瘤の形成を認めなかった. 本症の成因, 危険因子, 防止対策などにつき考察を加えるともに, 本症の認識と危険因子を有するMVRに際しては, 左室圧負荷を軽減する術中, 術後管理が重要であることについても述べた. 僧帽弁置換術(MVR)の後の重篤な合併症に左室破裂がある. われわれは1969年から1985年までに多弁置換例を含め76例のMVR中2例の左室破裂(Miller I型)を経験し, 治療に難渋したが2例とも致命し得た. |