Abstract : |
われわれは昭和51年4月から昭和61年8月までに64例の縦隔腫瘍の手術を行い, 7例の胸腺嚢腫を経験した. 7例のうち術前に胸腺嚢腫と診断されたのは4例で, 他は心嚢嚢腫, 胸腺腫, 奇形腫と診断された. また7例中6例には悪性所見が認められなかったが, 残りの1例には扁平上皮癌が併発していた. 治療は全例とも手術を行い, 全例再発はみられていない. なお, 扁平上皮癌を併発した症例は術後照射5,000radが行われ, 術後4年経つが健在である. 胸腺嚢腫は全縦隔腫瘍の1.5~2.1%を占め, 比較的まれな疾患であると言われてきた1)2). 近年の肺癌検診の普及や縦隔陰影への関心の高まりと, 胸部CTによる縦隔病変の診断の向上は, 胸腺嚢腫の発見及び症例数を増加させてきたものと思われる. われわれもここ5年間で全縦隔腫瘍手術症例の11%に当たる7例の胸腺嚢腫を経験した. ここではわれわれの経験した胸腺嚢腫7例について検討したことを報告する. 「症例」1. 対象 昭和51年4月から昭和61年8月までの10年5ヵ月間に, 当科では64例の縦隔腫瘍を手術した. 縦隔腫瘍の内訳は表1のごとくで, 胸腺嚢腫は7例で全縦隔腫瘍の約11%であった. そのほか胸腺腫12例(約19%), 奇形腫10例(約16%), 神経性腫瘍18例(約28%)であった. |