Abstract : |
急性心筋梗塞による心原性ショック89例を対象にintraaortic balloon pumping(IABP)の効果と限界につき検討した. 治療成績では, IABP治療群57例中18例(31.6%), 内科的治療群32例中3例(9.4%)に6ヵ月の生存を得, IABPは内科的治療に比較し有効な治療法であることが示された(p<0.05). IABP治療群全例の血行動態に対する効果はIABP施行後24~48時間で最大となった. 48時間以降では生存群の血行動態は引き続き改善されたのに対して, 死亡群では肺動脈楔入圧が上昇し, 左心機能はむしろ悪化する傾向を示した. IABP施行後3時間に生存群と死亡群の間に有意差を認めた1回心拍出係数(24.7±2.6vs16.5±1.0ml/beat/M2, p<0.05)と左心室1回仕事係数(17.5±2.3vs10.7±1.1gm-M/beat/M2, p<0.01)は心原性ショックの予後を早期に知る良い指標であると考えられた. すなわち, IABP3時間に1回心拍出係数20ml/beat/M2, 又は左心室1回仕事係数16gm-M/beat/M2未満を示す症例ではIABP単独では救命困難であると判断された. 更に1回心拍出係数と肺動脈楔入圧を用いてsubsetを作りIABP治療の予後判定を試みた. その結果, IABP60時間に1回心拍係数26ml/beat/M2未満, 且つ肺動脈楔入圧20mmHg以上の症例は極めて高い死亡率を示すことが判明した. 急性心筋梗塞による心原性ショックはIABPを施行しても, その生存率は30%前後に止まる, IABP単独では救命困難と早期に診断されたhigh riskの症例には他の対策を講ずることがこの致死的症候群の治療成績を向上させるうえで必要であると考えられた. |