アブストラクト(36巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 超低体温下循環遮断症例の遠隔期における精神・身体発育の臨床的研究
Subtitle : 原著
Authors : 岩本勲, 馬場尚道*, 内田象之*, 松尾和彦*, 古賀保範
Authors(kana) :
Organization : 宮崎医科大学第2外科, *国立長崎中央病院心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 2
Page : 214-220
Year/Month : 1988 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 先天性心疾患を有する乳幼児, 学童児の超低体温下循環遮断による開心根治術後6年から15年を経過した患児の精神・身体発育の状態について調査, 検討した. 対象は単純超低体温法を用いた153名(I群)と, 体外循環を併用した54名(II群)の総計207名であったが, 今回の調査ではI群153名中148名(97%)に, II群54名中52名(96%)に追跡調査ができた. 対象児の健康状態, 進学, 就業状況及び, 身体計測値, 学業成績, 知能指数(IQ)などの資料は保護者と出身学校へのアンケート調査から得られたものであるが, それらの資料の分析結果から, I, II群間に著明な差は認められず, 次の結論を得た. (1)開心術後の身体発育はI, II群ともに学童期まではやや不良であるが, 思春期ごろからは良好であった. (2)遠隔時の学業成績の5段階評価の平均はI群3.1, II群2.8であった. (3)術後遠隔時のIQテストは術前に比べ差がなく, 術後の知能低下の傾向はみられなかった. (4)遠隔時に脳神経症状を残したII群の3症例のうち2症例は遮断時間が60分を越え, 遮断時間の延長に原因があると思われた. (5)大学進学率はI, II群ともに長崎県の進学率に比べてやや劣るが, 高等教育機関への進学率はほぼ, 大学進学率と同じであった. (6)就業状況, 結婚, 出産についても特に問題なく, 大部分の患児は学校生活, 社会生活に立派に適応していると思われた. 以上, 今回の検討から, 遮断時間の延長や特別な合併症がない限り, 循環遮断下開心根治術の精神・身体発育に関し特に支障はないと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 超低体温と循環遮断, 遠隔期の精神, 身体発育, 知能指数, 学業成績
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