Abstract : |
症例は30歳, 男性, 胸部X-Pにて腫瘤影を呈し, 精査を行ったが確定診断が得られず, 悪性腫瘍も否定できないため, 肺部分切除術を行った結果, 病理組織標本で菌塊(Sulfur Granule)を証明し肺放線菌症と診断された. 放線菌症は病巣の部位によりcervico-facial type, abdominal type, thoracic type, と分類されているが, thoracic typeは, 一番少なく, このなかでも肺のみに病変を認めるものはさらに少なく, 確定診断がつきにくい. われわれの症例のようにレントゲン上, 腫瘤影を呈するものはまれで, 肺癌との鑑別も困難であり, 確定診断は開胸生検によらざるを得ないことが多い. 放線菌症は慢性の感染性の疾患で, 肉芽組織を形成し, その一部は軟化して膿瘍を形成し, 多数の菌から成る菌塊(Sulufur Granule)を含有することが特徴とされている. 放線菌は口腔内, 消化管に常在しており, 粘膜に損傷を生じた時, 病原性を示すことがあるといわれている. 放線菌は顔面, 頸部を侵すことが多く, 次いで腹部に多く, 胸部を侵す頻度は全放線菌症の約15%1)と言われている. |