Abstract : |
開心術後の循環動態の維持には, 適正な体液バランスの保持が重要である. 教室では心筋保護の一環として中心冷却を行っているが, 術中直腸温と術後末梢深部体温に注目し, 復温の程度が術後急性期の循環動態と体液バランスに及ぼす影響を検討した. 更に, 体表面積との関連についても検討を加えた. 対象は体外循環下に開心術を行った44例で, 術中因子として最低直腸温, 体外循環終了時直腸温, 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 加温時間, 体表面積を, 術後因子は体外循環終了後12時間までの中枢-末梢深部体温較差, 心係数, 体血管抵抗係数, 左室一回仕事係数と水, 血液及び全体液バランスを測定した. 体外循環終了時直腸温による比較では, 32℃以上群は, 32℃未満群に比し加温時間が長かったが, 他の因子では差を認めなかった. 体外循環終了後3時間の末梢深部体温が32℃未満群では, 体表面積が大きく, 深部体温較差, 体血管抵抗係数と血液及び全体液バランスは高値であった. 体表面積が1.17M2以上群では加温時間が長く, 深部体温較差, 体血管抵抗係数, 血液バランスが高値で, 心係数は低値を示した. 以上より, 体外循環終了時直腸温は全身の復温状態を十分には反映せず, 体外循環終了後3時間の末梢深部体温は, 術後急性期の血液及び全体液のバランスの推移を予測させる指標になると考えられた. |