アブストラクト(36巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高度虚血領域への再灌流圧の影響 ―全体の心機能と局所心機能による比較―
Subtitle : 原著
Authors : 鈴木和彦, 新井達太
Authors(kana) :
Organization : 東京慈恵会医科大学心臓外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 3
Page : 313-321
Year/Month : 1988 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 冠血行再建術では, 強度な狭窄部より末梢の領域は十分な心筋保護効果を得られず, より強いReperfuion injuryが発生すると考えられる. この障害に影響を与える因子は今だ不明の点が多いが, 今回われわれは再灌流時の重要な条件の1つである再灌流圧に着目し実験的に検討した. 成犬16頭を右心バイパス法を用い, 左室1回仕事量, 心筋内圧, 心筋長, を測定した(コントロール時). 次に, 左冠状動脈前下行枝を閉塞して同様の測定を行った(虚血時). その後Crystalloid potassium cardioplegiaにて1時間の心停止を得たのち, 前下行枝の閉塞を解除して再灌流を行い, 同様の測定を行った(再灌流時). 再灌流圧により, I群:低圧群(20~30mmHg), II群:中圧群(50~60mmHg), III群:高圧群(100~120mmHg)に分け, 各群の再灌流時の値をコントロール時, 虚血時とそれぞれ比較した. 心機能曲線における回復率はコントロール時との比較, 虚血時との比較の両者で, I群65.4±14.9%, 74.6±15.0%, II群74.6±5.8%, 88.2±10.5%, III群58.0±3.7%, 72.2±9.2%となり, II群とIII群の間に有意差を認め(p<0.02, p<0.05), II群がIII群より優れていた. 前下行枝領域の拡張期心筋内圧は再灌流時に上昇し, コントロール時, 虚血時との両者の比較でIII群248.3±37.3%, 172.3±28.7%がI群148.4±26.1%, 132.1±22.4%, II群167.9±28.3%, 132.9±14.9%より有意に上昇した. 前下行枝領域の拡張末期心筋長は, コントロール時との比較ではIII群126.7±10.4%がII群110.5±6.1%より有意に増大していた. 以上より, 1)心機能回復率ではII群がIII群より優れていた. 2)心筋内圧が有意に上昇していたIII群は他群より虚血部の冠血流にとって不利と考えられた. 3)拡張末期心筋長よりみてIII群はII群に比べて拡張期容積の増大を示し, 局所心機能面で劣ると考えられた. 4)これらより, 100mmHg以上の高い再灌流圧は避けるべきと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : Reperfusion injury, 灌流圧, 心筋内圧, 心筋長, 右心バイパス
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