Abstract : |
同種気管移植における血行確保の問題を解決する目的で, 雑種成犬を用い胸部気管を5軟骨輪切除し, これを切除部に再移植した後に, 移植部を大網で被覆する実験を行った. 成犬26頭を用い, 移植部大網被覆群19頭, 対照として移植部非被覆群7頭を作製した. 移植犬は経時的に内視鏡で観察し, 死亡犬, 屠殺犬は肉眼的, 組織学的に, また一部は走査電顕にて検討した. 移植部粘膜下血管新生の確認は右胃大網動脈よりsilicon rubberを注入に観察した. 非被覆群は術後40日以内に7頭中6頭死亡した. その死亡時の肉眼的観察では気管軟骨の消失及び内腔の狭窄が見られた. 一方, 被覆群は19頭中2頭が25日目と40日目に衰弱, 狭窄のため死亡したが大半が長期生存した. 術後142日目屠殺犬において肉眼的に狭窄はなく組織学的検査でも再生軟骨, 気管腺, 及び良く発達した線毛を有する再生上皮を認め, 走査電顕においても正常線毛を確認した. 右胃大網動脈からのsilicon rubber注入で, 移植気管の粘膜下血管新生は良好であった. また経時的内視鏡観察では1週目は移植部粘膜の虚血性変化が強く2週目ではこの虚血した粘膜は完全に脱落し, 3週目より次第に粘膜の再生が始まっていることが観察され, 同時期の屠殺犬による組織学検討でも同様であった. 術後2ヵ月経過すると正常粘膜との差はなかった. 本法は気管の同種移植における血行確保の問題を解決しうる有力な方法と考えられた. |