アブストラクト(36巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 開心術後早期の患者における輸血の免疫動態に及ぼす影響
Subtitle : 原著
Authors : 富樫賢一, 矢沢正知, 横沢忠夫, 山崎芳彦, 江口昭治
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 4
Page : 448-453
Year/Month : 1988 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 開心術後早期の患者において輸血が免疫動態に及ぼす影響について検討した. 体外循環下開心術中, 術中術後に輸血を全く施行しなかった9例(無輸血群)と輸血を施行した9例(輸血群)を対象とした. 術前, 術後第3病日及び第7病日に採血した. 免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)濃度と補体(C3, C4, C3act)値を一元免疫拡散法で, リンパ球亜群解析をモノクローナル抗体を用いたレーザーフローサイトメトリーシステム(SPECTRUM-III, Ortho社)にて測定した. その結果, 免疫グロブリン濃度は無輸血群, 輸血群ともに正常値範囲内で変動した. また両群間に有意差は認められず, 輸血は開心術後早期の免疫グロブリン濃度に影響を及ぼさないと考えられた. C3とC4値は両群ともに正常値範囲内で変動したものの, 術後上昇傾向を認めた. またC3act値は両群ともに術前に比し第3病日と第7病日で有意の上昇を認めた(p<0.01). しかし, 両群間に差は認められず, 輸血は開心術後早期の補体値に影響を及ぼさないと考えられた. リンパ球総数の第3病日での著減は無輸血群では認められないものの, T細胞数は両群とも第3病日に有意の減少を認めた(p<0.01). しかし, T細胞分画, B細胞分画, helperT細胞分画及びsuppressorT細胞分画には両群間に差は認められなかった. その結果から輸血は開心術後早期の免疫動態に質的影響を及ぼさないものの, T細胞著減現象を増強していると考えられた. 従って, 開心術に際し輸血を可及的に減少させるように努力することが, 術後早期の細胞性免疫能低下を軽減する上で肝要と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 輸血, 開心術後早期の免疫動態, 無輸血開心術, リンパ球亜群解析, GVH反応
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