Abstract : |
脳分離体外循環法を補助手段として手術を施行した58例の胸部大動脈瘤症例をもとに, 脳灌流法について検討した. 症例は男性33例, 女性25例, 平均年齢55.7歳であり, 疾患は嚢状動脈瘤13例, 解離性43例, Annuloaortic ectasia 2例であった. 58例中術後脳障害を認めたのは9例であり, うち7例を失った. 脳灌流方法は時期的にIII期に分けられたが, 常温ないし軽度低体温下に高灌流量(840~1,400ml/min)高灌流圧(60~140mmHg)で送血した初期には8例中4例(50%)の高率で脳障害が認められた. その後一側の浅側頭動脈圧をモニターし中等度低体温下に灌流圧100mmHg以下で管理するようにし脳障害は28例中4例(14%)と減少した. しかし, 圧モニターと反対側に脳梗塞を起こして死亡した例を経験してからは両側浅側頭動脈圧をモニターするようになり灌流圧, 灌流量ともさらに下げて管理しておりこの条件では21例に脳障害を認めていない. これら58例の経験からわれわれは, (1)両側浅側頭動脈圧モニター, (2)灌流量500ml/min, (3)灌流圧40~60mmHg, (4)中等度低体温(25度)にて脳灌流を行い臨床的に良好な成績を得るに至っており, 弓部大動脈瘤手術の有効な補助手段であると考えられる. |