Abstract : |
先天性完全房室ブロックのペースメーカー(PM)植え込み術の適応について, 特に年長児について8例の自験例をもとに検討した. これらの症例は診断時年齢は2~12歳でありPM植え込み時年齢は6~26歳であった. 合併心疾患は1例にPDAを認めたのみであり, 術前自覚症状はAdams-Stokes attackの既往が3例とhigh flow PDAによるpulmonary congestionが1例に認められた. 心拍数は50/min前後, His束心電図ではAHブロッ5例, HVブロック1例であった. 運動負荷では脈拍増加は不良であり, 心機能は著明な左室容量負荷の増大所見を示していた. 右室心筋生検ではいずれの症例でも心内膜下や間質の線維化, 心筋細胞肥大, 心筋細胞の走行異常などが認められた. PMはVVI6例, VDD1例, DDD1例で植え込んだ. 術後経過は良好で運動も普通に行っており, 術後6カ月以降の心カテーテル検査では容量負荷は減少し, 1例では2年後の右室心筋生検で心筋細胞の肥大は著明でなく均一化の傾向が認められた. 合併心疾患や症状のない先天性完全房室ブロック症例は経過観察されていることが多いと思われるが, Adams-Stokes attackの可能性と危険性, 心機能への悪影響と心筋組織の容量負荷持続による変化の可能性, またペースメーカー機能の進歩や長寿命化, 小型軽量化などから, PM植え込み術の適応は従来より更に拡大されていくべきではないかと思われた. |