アブストラクト(36巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 再灌流時の心筋保護に関する実験的研究-心筋加温方法とGI液冠灌流の効果-
Subtitle : 原著
Authors : 横川秀男, 井上恒一, 野元成郎, 堀内誠, 渡辺俊明, 村田升, 高場利博, 石井淳一, 中井康光*
Authors(kana) :
Organization : 昭和大学医学部外科, *昭和大学医学部第1解剖
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 36
Number : 4
Page : 484-494
Year/Month : 1988 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 再灌流時の心筋加温方法とGlucose-Insulin(GI)液による冠灌流再開法を, ラット摘出心を用いて検討した. 4℃, 30分間の心停止後, 心筋加温方法によりI~IV群とし, GI液を用いた冠灌流再開群をV~VII群とした. 再冠灌流20分後よりworking heartとし心機能回復率を測定した. また再冠灌流中に逸脱するCPK, LDHを測定し, 心筋超微形態についても検討した. 大動脈流出量回復率は, 速やかに常温(37℃)としたI群で80%で, 27℃で10分間冠灌流した後常温としたII群より優れていた. 常温に戻す前に17℃で10分間冠灌流したIII群は, 心筋温17℃でわずかな心拍動をみたIIIA群と, 心拍動を認めなかったIIIB群とで回復率が大きく分かれた. IIIB群は90%以上の回復率を得たが, IIIA群は32.8%にとどまりI群とは有意差をもって劣っていた. これは中途半端な心拍動が心筋エネルギー消費を増したためと考えられた. 再冠灌流後10分間を7℃としたIV群は, 回復率90%以上であった. これは心筋加温直前の低温冠灌流が心筋保護効果を増強したためと推察された. GI液を用いてただちに常温冠灌流を再開したV, VII群はともに100%前後の回復率で, 極めて良好で安定した成績を得た. しかし, GI液で低温再冠灌流したVI群は回復率が劣った. CPK, LDH, 超微形態もこれを裏付ける結果であった. 以上より, (1)常温GI液にて速やかに心筋を加温し高エネルギーリン酸化合物の回復をはかること. (2)そして血液温が常温に近づいた時点で大動脈遮断を解除し冠灌流血液を常温に保つこと, の2点によりさらに優れた心蘇生と術後心機能の安定が得られると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心筋加温方法, GI液, 再冠灌流, 心蘇生
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