Abstract : |
大動脈縮窄症(COA)における大動脈再建術を想定し, 弓部交感神経叢切除の血行動態に及ぼす影響を実験的に検討した. 雑種成犬24頭を, I.対照群, II.剥離群, III.ノルアドレナリン(Nad)負荷群, IV.交感神経刺激群, V.剥離後刺激群に分けた. 弓部交感神経叢切除は峡部を中心とした大動脈弓と主要分枝に外膜剥離の要領で行った. 交感神経刺激はAnsa subclaviaに1分間の電気刺激を行った. 各種操作, 負荷前後の測定間隔は60分とした. 1.II群ではI群に比し平均肺動脈圧のみ有意に13%低下した(p<0.05). 2.III群で剥離前後にNad 1.0μg/kg/minの負荷を行ったが, 剥離前後で反応に差はなかった. 3.IV群で交感神経刺激により収縮期血圧, 平均血圧は29±12%, 20±9%上昇したが, V群ではそれぞれ3±6%, 3±5%上昇にとどまった(p<0.01). 4.IV群でNadは刺激開始後30秒, 1分において肺動脈血中の濃度はそれぞれ58±65%, 44±70%上昇したが, V群ではそれぞれ8±18%, 18±18%にとどまった(p<0.05). 血中アドレナリンは一定の傾向なく推移した. 以上の結果より, 大動脈弓の広範な剥離はそれ自体血行動態に悪影響を及ぼさず, 外因性のNadに対する異常反応も起こさないが, 弓部交感神経刺激による血中Nad分泌をおさえ, 血圧上昇が抑制されることが判明した. 臨床例及びCOAの病態生理を考えると, 本症の大動脈再建時には積極的な大動脈剥離による交感神経叢の切除が併用術式として有効な可能性が示唆された. |