Abstract : |
心臓弁膜症の手術予後に影響を及ぼす諸因子について臨床的検討を行った. 対象は1981年より1986年8月末までに外科治療を施行した296例である. 病変部位は僧帽弁(M)152例, 大動脈弁(A)50例, 連合弁(C)94例であり, 術式はM病変の約50%, A病変のほぼ全例に, また, T病変の約20%に弁置換術を施行した. 術前の臨床的及び血行動態的20因子を取り上げ, その累積死亡率に関して一変量解析(X2検定)及び多変量解析(数量化II類)を行った. 手術成績は心原性の早期死4.0%, 晩期死1.7%, 累積死亡率5.7%であった. X2検定では, 累積死亡率は, C病変はM及びA病変に比して高率であった. また, M病変ではNYHA IV度, 腎不全, 肝不全, 肺不全, 心臓悪液質の合併, CTR≧70%, LVEDP≧20mmHg, mPCWP≧25mmHg, C病変ではNYHA IV度, 腎不全の合併, CTR≧70%, mPCWP≧25mmHgの累積死亡率は高率であった. しかし, A病変では諸因子別での累積死亡率には有意差はなかった. 多変量解析では, M病変で累積死亡率に関する因子として腎不全, 肝不全, 心臓悪液質の合併, LVEDP≧20mmHg, C病変では腎不全の合併, CTR≧70%, LVEDP≧20mmHg, mPCWP≧25mmHgが挙げられ, 上記の危険因子を有するNYHA IV度の重症例の累積死亡率は高率であった. 心臓弁膜症手術の予後不良な指標として, 臨床的にはNYHA IV度の連合弁膜症で, 肝不全, 腎不全, 心臓液質の合併, 血行動態的にはLVEDP≧20mmHg, mPCWP≧25mmHgの因子が挙げられた. |