Abstract : |
ラット灌流心臓を対象に心筋における活性酸素傷害の機序と再灌流時心筋傷害に対する活性酸素の役割を検討した. 1)ラット灌流心臓に大量のH2O2(300μM以上)を投与するとcytosolでは過酸化物Ferryl・Mbが生成されMtのNADH, Cyt. aa3の酸化を生じ心停止または高度心不全を来した. この際, glutathione peroxidase(GPX)系の回転により酸化型グルタチオンの組織外(灌流液中)放出を認め心筋のFerryl・Mb生成に平衡した. これよりグルタチオン放出速度は過酸化反応の推移を示すものと考えられた. H2O2の心筋毒性(心停止)は主としてMtにおけるエネルギー代謝の阻害によると結論された. 2)diltiazemで前処置を行うと300μM以上の大量H2O2投与に際しても心不全, 心停止の発生が防止された. この機序について若干の考察を加えた. 3)高カリウム心筋保護液を用いた3時間のmulti-dose cardioplegia法において1時間ごとに10分間の再灌流を反復する大動脈遮断解除併用間歇的cardioplegia(ICA)と連続大動脈遮断を行う連続cardioplegia(CCA)の心筋保護効果を比較した. ICA法では再灌流後の心機能, 酸素代謝の回復は不良であり再灌流を反復することに大量のグルタチオンの放出を認め活性酸素傷害の関与が実証された. この再灌流時傷害の機序に関し, 1)に述べた基礎的データーをもとに考察を加えた. |