Abstract : |
虚血性心疾患に対する大動脈-冠動脈バイパス術の右冠動脈グラフト20本, 左前下行枝グラフト43本の単独グラフトを対象とし, グラフト流量と, その流速波形から収縮期流量, 拡張期流量の比D/Sを求め, 冠状動脈の狭窄度, 側副血行路の影響について検討した. 更にdipyridamole 10mgの静脈内投与を行った時の右冠状動脈12本, 左前下行枝30本の, グラフト流量, D/S比の変化を検討した. 右冠動脈のグラフト流量は, 72.4±46.5ml/min, D/S比は1.67±0.61, 左前下行枝のグラフト流量は89.8±40.3ml/min, D/S比は2.27±1.06と左前下行枝グラフトにおいてより拡張期優位を示した. 冠状動脈の狭窄度はグラフト流量, D/S比に影響しないが, 他枝より血流を受けるrecipient群では側副血行路を持たない群, 他枝に血流を供給するdonor群と比較してグラフト流量, D/S比とも低値であった. dipyridamole投与によりグラフト流量は, 右冠状動脈で32.0%, 左前下行枝で30.5%, D/S比は, 右冠状動脈で23%, 左前下行枝で28.6%の増加を示した. 術後造影で閉塞をみたグラフト7本では, グラフト流量(35.4±20.1ml/mrin), D/S比(1.22±0.42)ともに開存グラフトより低値を示し, 低流量グラフトで開存した10本のD/S比2.00±0.62と比較しても有意差(p<0.02)を認めた. dipyridamoleによるグラフト流量, D/S比の変化もグラフト閉塞群では開存群と比較して小であった. グラフト流速波形から求めたD/S比はグラフト末梢冠動脈の状態を総合的に反映し, dipyridamole投与はグラフト流量増加の予備能力, 開存性の予測に有効と考えられた. |